安田龍誓
昨年の夏、私が住職をさせていただいている真教寺の懸案事項であった、本堂の耐震工事と墓地整備工事をいたし、これでひと安心と思っておりました。ところが、その工事をしたいただいた大工さんに全ての建物を点検してもらったところ、本堂の屋根瓦は補修できないほどに傷んでいること、また、書院と古い庫裏が地盤沈下とシロアリによって、改修するより地盤から建て直す必要があることが判明しました。早速に責任役員・総代さんと相談し、とりあえず本堂の屋根だけでも対応するため、具体的に瓦屋さんから見積もりを取ることにしました。
2軒の瓦屋さんそれぞれから見積もりの説明を聞いて、たいへん驚き、思わず胸が熱くなりました。それは本堂の屋根組みがトラス構造、橋等でよく見かける三角を逆にした組み方がしてあり、少ない柱でも強度が保たれる構造となっており、2軒の瓦屋さんもこんな屋根組みをした本堂は初めて見たとのことでした。この本堂は先の大戦で焼け野原となった後、5年かけて建てられた本堂です。当然多くのご門徒も家を焼かれ、自分の家の再建をしなければならない中で、どんなにかご苦労があったことでしょう。また、大工さんも物資が手に入らない状況で、如何に少ない材木で丈夫な本堂を建てられるか、たいへん苦心をされたのだと思わされたことでした。当時の住職・門徒の方々の聞法の道場を再建したいという尊い願いが現在の本堂となって建立されたのだと気づかされたことです。
たいへんありがたいことに、今年の5月から本堂屋根修復と書院・庫裏の建築が始まりました。願いを建立する。もっと言えば願いが形になるということでしょう。その願いを、今の住職・門徒が受け取り親鸞聖人の教えを聞く聞法の道場として護持していきたいと思います。