加藤淳
昨年の10月、自坊に於いて蓮如上人五百回御遠忌法要、本堂修復落慶法要を厳修いたしました。自坊では31年ぶりに稚児行列も出て、たいへん賑々しく法要が終わりました。
稚児行列参加の募集をしている時、ご門徒さんから「稚児行列には3回出るといいんですね」との質問が多くありました。「どうしてですか」と問い直してみると、ほとんどの方から「人から聞きました」とか「みなが言うから」という返事が返ってきました。その返事に私は「ご縁があれば4回でも5回でも出ていただいてもいいんですよ」と答えさせていただきましたが「3回出たからいいです」と断られる方もありました。
この「3回出るといいですね」という言葉はどこから来ているのか分かりませんが、あるご門徒さんから「私も小さい頃お稚児さんに3回出させていただきましたが、良いことは何一つなかったです」と発言されたことが印象的でした。
私たちの日常は、幸せになりたい、豊かになりたいという思いから、一生懸命に努力をしています。しかし、仏教の基本は「人生は苦である」と教えてくださっています。時には「どうして自分ばかりがこんな目に会わなければならないのか」と、現実そのことを受け止めることがなかなかできません。都合が悪くなると「3回お稚児さんに出しておけばよかった」などと、お稚児さんの回数が気になり、問題の原因を外に向けて探しているのが私たちの生き様なのではないでしょうか。
「稚児に3回出なかったから、こんな目に会うのでは」ということではなくて、迷っているのは人間です。やがて老いて、病んで、死んでいく我が身を、いかに生きていくか、どのように生きていくことができるのか、そのことを私たちに問われているのが仏法の基本的な課題であると思います。「調子の良い時だけが自分ではなくて、都合の悪い時も、悩んでいる時も、全てが本当の貴方なんですよ」と問いかけられています。現実そのことを引き受けながら生きていく勇気をいただくのが仏法ではないでしょうか。