梅田良惠
お年忌の場でよくこんな質問を受けます。「赤い蝋燭が立ててありますけど、白じゃないんですか」と…真宗大谷派では、金・銀・白・赤(朱)の四色の蝋燭を儀式に用います。一般的には、白・赤の二色を使うことが多いかと思います。では、この二色にはどういう意味があるのでしょうか。今までにお葬式に関わられた方はその当時を思い出してください。葬儀、またはそれ以降の七日参りには白い打敷(うちしき)、色花を使わないお華、そして白い蝋燭でお荘厳します。また、喪服の色も本来白であり、所によっては今でも喪主が白の装束を着用する所もあります。それらすべて故人の死に対する私たちの悲しい気持ちを表しています。故人の死から四十九日の満中陰法要まで喪に服し、五十日目に忌明を迎えます。喪に服する期間が過ぎ玄関の忌中の札もはがすのです。
さて、忌明も過ぎ、百ヶ日、お年忌を迎えるのですが、その際、お坊さんがお経の前に表白(ひょうびゃく)を読みます。その中の言葉を3ヵ所抜粋して読んでみます。「亡き人を偲びつつ 如来のみおしえに遇いたてまつる」「真実のみおしえに遇いたてまつり 慈光のうち 歓喜の日々に生く」「師主知識の遺徳をよろこび つつしみて恩徳の大行をいそしまん」お年忌を勤めるとは、亡くなられた方をご縁として、残された私たち一人ひとりが仏様の教えに触れ、念仏申す身となったことを慶ぶ大切な行事です。その慶びを色の着いた打敷、色の着いたお華で荘厳してあるのに、白い蝋燭では不釣合いです。蝋燭の色に気を配るだけでも実際にお年忌にお参りする私たちの気持ちが改めて問われているのではないでしょうか。
最後に付け加えておきますが、御仏前の水引の色は、忌が明けるまでは弔事として白黒を使い、忌が明けた以降の仏事、百ヶ日、お年忌は、慶事でありますので紅白の水引を用います。