海野真人
先日、山口県にある漁港の町、仙崎に行ってきました。ここは有名な童謡詩人金子みすずが生まれ育った町です。彼女は、熱心な真宗門徒の家に育ったこともあってか、その詩には真宗の教えを感じるものがたくさんあります。それが童謡という誰にでも分かりやすい言葉で語られているので親しみやすく、今では小学校の全教科書に取り上げられており、子どもたちもいくつかの詩を暗唱しているほどです。
サン・テグジュペリは『星の王子様』の中で「大切なものは目に見えない」と言っていますが、まさに彼女の詩は目に見えない大切なものがあることを教えてくれます。有名な『大漁』という詩などはその代表例でしょう。
蓮如上人七百回御遠忌の際のテーマは「バラバラでいっしょ」でしたが『私と小鳥と鈴と』という詩では、このように言っています。
私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、飛べる小鳥は私のように、地面を速くは走れない。私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、あの鳴る鈴は私のように、たくさんな唄は知らないよ。鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがってみんないい。
とても柔らかい言葉で「バラバラでいっしょ」の精神が語られているように感じます。
また、『蓮と鶏』という詩は他力の大きなはたらきを感じさせてくれます。
泥の中から蓮が咲く。それをするのは蓮じゃない。卵の中から鶏が出る。それをするのは鶏じゃない。それに私は気づいた。それも私のせいじゃない。
2003年、仙崎市にみすず記念館が建てられ多くの人が訪れています。私も家族でここを訪れましたが、日常の中ではつい忘れてしまって、目に見えるもの、それもほんの目先のことにとらわれている生活の中で、「見えぬけれどもあるんだよ。見えぬものでもあるんだよ」ということに気づかされる場所でした。みなさんも機会があれば訪れてみてはいかがでしょうか。きっといい出会いがあると思いますよ。