飯田光子
私は車で出かける住職に声を掛けることがあります。
「行ってらっしゃい。気をつけて」
と、ある時思ったのです。この言葉は本当に相手の身体のことだけを気遣って言っているのかしらと。それだけではなくて、もし事故でも起こしたら、私の身に大変な負担が振りかかるのではないか、との心配から言っているのではないかと。
子どもの高校入試の時もそうでした。
「どこの学校でもいいよ」
と、口では調子の良いことを言いながら、心では少しでも優秀だと言われている学校に受かって欲しいと思っていました。私の虚栄心を満足させて欲しいと願っていました。
私の母に対しても同じです。いつもは余計な手出し、口出しはして欲しくないと思っているのに、ゴミ捨てやトイレを掃除してくれる時は、余計な手出しとは決して思わないのです。何事も、自分の都合でしか物事を考えることのできないのが私の姿です。
そんな私に「それでいいのか」と問うてくださるのが仏さまだと教えていただきました。
自分勝手な思いに縛られて、相手に対して怒ったり疎ましく思ったりしてしまう私に、今日も「それでいいのか」と、仏さまの問いかけが聞こえてきます。