藤井恵麿
私は、お線香に限らず、煙とか強い香りが苦手です。ですから、門徒さんの家などの法要の場で、たくさんのお線香に火を点けられたり、たくさんのお焼香をされたりする方がおられると、その香りが体中に残ってしまい、嫌な思いをします。そのような時、思わず「一体、お線香を焚く意味とは、お焼香の意味とは何なのか」と考えてしまします。
そのようなことを考えながら、香りを消すために家に帰ってきてから顔を洗っていた時です。「本当にしつこいなぁ」と思わずため息が出た時、気づかされました。実はこの香りには大切な意味があることを。
最初、お線香・お香は形がありそれが燃えて煙が出ます。ここまでは、われわれの目で見ることができます。香りには形がありませんが、しかし我々は、その香りからお線香・お香を思い浮かべるという意味においては、先に亡くなっていかれた人に対しても全く同じではないでしょうか。
先に亡くなっていかれた人に対する思いはいろいろあるでしょうが、一番大切なことは「念仏の教えに導かれ、人生を全うされた」ということではないでしょうか。だからこそ、真宗の儀式に則ったお葬式をし、それに伴い法事を勤めさせていただくのではないでしょうか。そのことを改めて確認させていただくことが、法事においても大切なことではないのでしょうか。
ですから、お焼香の時、合掌していただくのは、香りを通して、念仏の教えに導かれ、人生を全うされたその人の生き方を深々といただくことではないかと思います。金子大栄先生の「花びらは散っても花は散らない、人は去っても面影は去らない」という言葉が静かに胸に響いて参ります。