お寺で画像のような木彫や瓦を見たことがありますか。向拝(ごはい…本堂の屋根が前方に張り出した部分)の木鼻(きばな…横向きの木が突き出た部分)と屋根瓦に注目してください。どれもふしぎな顔で、一見、動物のようにも見えますが、実在の生き物ではありません。その正体は空想上の「龍」「貘」「獅子」などで「霊獣(れいじゅう)」と呼ばれている獣(けもの)です。
そもそも、災害除けのために飾ったのが始まりといわれていますが、江戸時代よりお寺の装飾工芸として全国へ広まりました。木彫を専門とする職人が数々の現場で、彩色した華やかな作品を作りました。幕府が倹約令を触れてから、彩色を用いない素木(しらき)の彫物となり、彫りを深めてシャープにし、迫力と凄みを求めるようになりました。
それでは、画像の霊獣を紹介します。
貘 悪夢を食べて睡眠中の恐怖から人間を守ってくれます。さらに、貘は鉄や銅を食べる獣で、戦争が始まると武器を作るため鉄や銅がなくなるので、平和な時代にしか生きられません。
龍 お釈迦様が生まれた時、天に9匹の龍が現れて“甘露(かんろ)の雨”を降らせて祝ったという伝説があるなど、仏教を守る獣とされています。
蜃 ”気(強力なエネルギー)“を吐き出す龍です。他の龍との見分け方は、口から上方へ巻き上がる気を吐く様子を表現しているところです。
獅子 百獣の王ライオンがもとになっている伝説上の生き物です。ライオンが吼えると他の動物が震え上がるように、「阿弥陀様の教え」は人々の目を覚まし真実を明らかにすることをたとえています。