岡本寛之
先月、八月の十六日から二十二日において『福島のこどもたちを三重へプロジェクト』が開催されました。東北大震災の翌年から継続開催されており、今年で六年目を迎え、私もスタッフの一人として参加させて頂きました。
今年のプロジェクトも教区児童教化連盟を母体としたスタッフ有志をはじめ、主に食事の面でご協力頂いた別院婦人会の皆様、またプロジェクトに賛同しご協賛頂いた教区内外多くの有志の皆様等、たくさんの方々のご尽力を持ちまして無事、子供たちをお迎えすることができました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
たくさんのご支援ご協力、誠にありがとうございました。
全日程のうち二日間、同朋ジュニア大会として福島の子供たちと三重の子供たちが共に一泊二日のキャンプを行いました。
今年初参加の子供も多く「みんな仲良くできるかな…」という不安もよそに、班ごとに分かれての夕食準備の時にはすっかり打ち解け、どの班も見事なチームワークを発揮して美味しいカレーを作りました。
八月のお盆明けですから夕食時とは言えまだ日差しも強く、子供たち全員テントの下で食べる事になりました。しかしとある班の子が一人(仮にA君とします)、調理場のテーブルの横で食べ始めてしまいました。班担さんが皆と一緒にテントで食べるよう何度も促すのですが「僕はここで食べるから」の一点張りで鍋から離れようとしません。班担さんも困り果てて居るのが見て取れました。
たまたま近くに居た私は「言う事聞かん奴っちゃな…」と半ば呆れながら見ておりました。余りにもそのやり取りが続くので助け舟を出そうか迷っているその時でした。
「一緒にたべようぜ」と数人の男の子がテントから駆け寄ってきてA君同様、調理場のテーブル横で食べ始めてしまいました。
「おいおい、そっちかよ(笑)」とは思いながらも、私はA君たちを注意することが出来ませんでした。先程とは明らかに違い、楽しそうにカレーを食べているA君たちを見て「これはこれで有りなのかも…」と感じたからです。
後で聞いたら班担さんも同じ様に感じたそうです。
◇子供たちの体調・安全を考えてテントで食べさせようとする大人の考え方。
◇せっかく外で食べるのだから好きなところで食べたいという子供の考え方。
子供と大人では考え方はもちろん違ってきます。子供と子供、大人と大人の間でも一人ひとり違うわけですから当然と言えば当然です。
今回の出来事もどちらかが正しく、どちらかが間違っているという話ではなく、どちらも正しいと言えるでしょう。もっと言えば正解自体無いのかもしれません。
団体行動にはある程度のルールや決め事が必要です。しかしそれはあくまでも、場を円滑に進めるための手段であって目的ではありません。ルールを厳守する事に拘り過ぎることによって本来の目的を見失ってしまうこともあるでしょう。
今回の出来事である言葉を思い出しました。
『スタッフの皆さんは、何歳になっても子供たちと同じ目線を持ち続けてください』
私が初めて児童教化連盟に関わった当時の※青少年幹事さんの言葉です。
子どもたちの前でだけ目線を「下げる」のではなく、常に心の中に同じ目線を持ち、子供たちがどう考えどう行動するのかを考える。今回の出来事によって自分が子供たちに関わり始めた当時の原点を見つめ直すご縁をいただきました。
あの時、A君のもとに男の子たちが来てくれなければ、
私は子供と大人、どちらの目線でA君に接していたでしょうか?
そう考えると今更ながら背筋がゾッとします…。
※現 青少幼年幹事
(長島組源盛寺住職二〇一七年九月上旬)