高木 彩
映画『アナと雪の女王』の主題歌『Let it go ― ありのままで ―』という曲が話題になっています。
この映画の中で、主人公の一人エルサという王女は、自分の持つ、あらゆるものを氷にしてしまう魔力に悩み、その力を秘密にして誰にも会わないように生きていました。しかし、その魔力を他人にみられてしまったことをきっかけに、もう隠して生きるのはやめて、人里はなれた場所で、思うままに生きようとします。そのときに「ありのままで」の曲が流れるのですが…。
エルサの苦しみは、魔力のことを他の人に認めてもらえず、自分は人として間違っていると思われることに堪えられなかったからだと思います。
しかし、自分の持つモノを否定することも、拒否することもできなかったエルサは、誰も信じることができず、自分の持つ魔力を信じるしかなかったのだと思います。
親鸞聖人は、このように自分の思いや考えを中心に生きる姿を「邪見驕慢悪衆生」(真宗聖典205頁)と『正信偈』で言われています。
「邪見驕慢」とは、自分の思いや考えを正しいものとして、他の人の意見に耳を貸さず、仏法も自分の考えに当てはめて都合のいいように聞き、自分の考えに合わなければ否定したり、奇異の目で差別したりするような生き様のことを言います。
まさにエルサは、「ありのままで」と言いながらも、自分の持つ力、思い、考えだけを信じ、自分の殻に閉じこもってしまったのでしょう。
親鸞聖人は、「邪見驕慢」の衆生は、自分を頼りにしてしまうため、念仏によって救われると信じることが甚だ難しいと言われています。
それでは、救われないのかと言えば、そうではなく、この自分の力ではどうしようもない心を持ったあなたこそ救いたいというのが、阿弥陀如来の本願です。
「邪見驕慢」である私に、阿弥陀如来は、「あなたのありのままの姿に気づいてください」と呼び掛けてくれているのだと思います。
自分自身のことを人に言われると、なかなか素直に聞けません。
しかし、仏法に触れ、念仏を称えることを通して、私が何者なのかを教えてくれる、み仏の言葉に本当のありのままの自分を気づかせてもらえるのだと思います。