006相続

藤岡真

昨年末に近くのおばあさんが亡くなり、葬儀、中陰とお勤めさせていただきました。最初に息子さんから、「母は、ここに嫁いで来て最初に『正信偈』を覚えたと言っておりました。若いころは、なんとも思わずに聞いていたが、大事なことではないかと思うようになってきた」と伺いました。

亡くなった方は、お漬物作りが上手で、よく報恩講などに、「お参りの方に食べてもらってください」と届けてくださいました。お斎作りの手伝いに来られている人たちも、よく「味見」と称して、台所でいただいたものです。みんなが「役得よね」などと言いながら次々に食べるので、いつもおばあさんのお漬物は大半が台所でなくなってしまうのでした。

忌明けの法要では、「残念ながら、母の漬物の味を受け継ぐことはできませんでしたが、『正信偈』の教えだけは、受け継ぎ、伝えていきたいと思います」と息子さんが挨拶され、一同静かに聞き入っていました。亡き母が自分へと伝えてくれたことへの感謝を述べられたようです。

「人は法(教え)によらなければ救われないが、法は人によらなければ伝わらない」といわれるように、仏法は人から人へしか伝わらないものです。人に伝えるためには、まず自分自身がしっかりと受け止めねばならないことを、改めて教えられたことであります。

2月9日に三重教区・桑名別院宗祖親鸞七百五十回御遠忌委員会の第1回総会が開かれ、約2年後の2014年3月27日から3日間にわたってお勤めされる御遠忌の内容について話し合われました。

本山での御遠忌を終え、いよいよ地元や自坊での御遠忌が勤まりつつあるなかで、改めて自分自身が教えをどのように受け止めているかが確かめられなければならないと思います。