005自然からの回答

金津正嗣

若い頃から自然農法に興味があり、福岡正信さん、岡田茂吉さんの本をよく読んでいました。定年後、農薬、除草剤、元肥を使わない農業を始めましたが、現農政の減反政策で、作付も半分ほどに制限されてしましました。

また、自然栽培は土作りもしなければならないので、とにかく時間がかかります。ですから、2割から3割、ひどい時には4割の減収のリスクがあり、需要に対して供給できないという現実がある訳です。この栽培を始めて3年が経ちました。

「医療同源」という言葉がありますが、食と健康と農業にはたいへん大事な関係があると思います。

現在、商品としての農作物は規格化され、同じ大きさ・形のものが店頭に並べられますし、一年間を通じて同じものが手に入ります。そこには、そのものの旬はありません。50年前の野菜の成分と今のものとを比較すると雲泥の差があると聞きます。まさに、私は、昔栽培されていた質の高い野菜を作りたいと思っております。

2006年12月のNHK「プロフェッショナル」という番組で、青森のりんご農家・木村秋則さんの話が放映されました。

木村さんのりんご栽培は、肥料を与えない無肥料栽培です。栽培当初は8年間もりんごの花が咲かなかったそうです。それは、それまでの化学肥料や残留農薬などを土の中から消して、土を浄化するための時間であったと思います。そして、虫や病気の原因は肥料の質にあるということが私なりに理解できました。

「肥料をやらなければ植物は育たないと思っていた今までの考え方は固定観念だ。それを壊さなければ、自然からの回答メッセージを見つけることができない」と木村さんは言われます。

「作物は肥料で作るもの」「人間は栄養を摂ることで健康なのだ」ということが常識であると私は思っていました。「作物は自然の循環の中で育ち、人間は、本当の自然の恵みの中で育ったものを食していれば薬も要らない」と受け止めた時、目からウロコが落ちたようでした。

「本当のものが分からないと、本当でないものを本当のものとしてしまう」という安田理深先生のこのお言葉をいただきますと、本当でないものを本当のものとして生きてきた私の生き様について考えさせられます。