折戸芳章
「60億分の1の男になる」と宣言をして柔道界から引退をし、格闘技の世界に飛び込もうとしている北京オリンピック柔道100キロ超級の金メダリスト、石井慧選手。次回ロンドンオリンピックでも充分金メダルの可能性がある選手だけに、彼の引退を惜しむ世論の声は多い。彼が言った「60億分の1の男」とはおそらく格闘技で世界チャンピオンになることを意味していると推測するが、どんな競技であれ世界チャンピオンになるということは、とてつもない努力と精神力が必要であることは紛れもない事実でしょう。
さて、私のいただいているこの「いのち」こそ60億分の1の「いのち」ではないでしょうか。そのことを日常の生活の中で、また混迷する社会状況の中でそう実感している人が、果たしてどれだけおられるでしょうか。60億分の1の世界チャンピオンになろうとしている石井選手も、その前にすでに60億分の1の尊い「いのち」をいただいているのです。そして、この私のいのちも60億分の1の「いのち」であったことを実感し、気づかされていくことです。
あと数日で新しい年を迎えようとしておりますが、今年一年を顧みますと、いのちを軽視した様々な事件を思い起こさせられます。
「今、いのちがあなたを生きている」の御遠忌テーマには、私のいのちこそが60億分の1の尊い「いのち」であることに目覚めよとの願いが込められているのだと、自ずと頷かずにはおれません。