031「報恩講」について

員辨暁

今年もまた、報恩講の時期がやってまいりました。

この「今年もまた」という言葉の中には、「またか」という私の心の中にある報恩講に対する消極的な意味合いも含まれているのかも分かりません。

ある先生がこんな話をされました。

お茶の道、茶道には茶会の心得として「一期一会」という言葉があります。これは一生に一度限りの出遇いであることを意味します。これに対して仏道では「一期一会」ではなく「一会一期」なのだそうです。たった一度の出遇いが一生の出遇いになる。あなたがどんな人生を送ろうとも決して離れることのない出遇い、これが仏道であるということです。

親鸞聖人は法然上人との出遇いによってお念仏の教えに出遇われました。そのお念仏の教えは親鸞聖人に、生きることの意義・喜び、また生きることへの意欲を与えました。

現代の私たちは、今、生きることの意義・喜びが分からず、生きる意欲を失っているようです。

今年もまた、報恩講の時期がやってまいりました。

先人たちは私たちに報恩講という仏事を通じて、大事なご縁を伝え残してくださいました。「また今年もか」という横着な私の心に「おまえは本当にそれで満足しているのか?」と、親鸞聖人から問われているようです。