藤井隆信
新しい年を迎え、皆さまのお念仏の生活の更なる深まりをお喜び申し上げます。
「日々新たなり」という言葉がございますが、なかなかそのように受けとることはできません。「今日もまた同じように」というのが、私の望みなのです。それでも人生には新たな出来事が次々と起こってきます。昨年の11月、私のお寺で二つの仏前結婚式がありました。一つは私の長女の結婚式。もう一つは2週間後、ご門徒さんの長男の結婚式でした。
長女の結婚にはとても驚かされました。突然「私この人と結婚します」と紹介されて、父親として「さてどうしたらよいのか」親の立場が示せません。私の父親が、私の姉や妹の結婚について、強い権威をもって臨んだことが思い出されました。しかし、自分には親の権威といったものは何もありません。長女は「“結婚式”はしません」と言います。私はうろたえてしまい、妻が必死に頼んで、どうにか結婚式をしてもらうことになりました。
仏前をお荘厳して、両家の親族の皆さんに集まってもらい、司婚の言葉、二人の結婚の誓いの言葉が述べられました。全く知らない者同士であったこの二人は、今不思議の仏縁に遭い、夫婦となったのです。そして、その因縁の一つを私が担っているのです。そんな深い思いがこみ上げてきました。自分たちが結婚した時の新鮮な感動はとうに忘れてしまいましたが、その自分たちの結婚が、今この長女の結婚の因縁となって現れ、同じこの本堂で仏前に誓いを述べている。誠に不思議なことでした。
ご門徒さんの方は、今ではとても見られないような、昔ながらの盛大な結婚式でした。大勢の人がお祝いに押しかけ、本堂に五色の幕をめぐらせて、高欄の上に緋毛氈(ひもうせん)、その上を白無垢の新郎新婦が入堂、華やかな雅楽が鳴り響き、「村中の人が花嫁を迎える」というお祝いの仏事を勤めさせてもらいました。
結婚式という人生の一大事に遭わせてもらうことが、「大勢の村人」の眼前で行われる素晴らしさ、そして私自身が広大無辺の深い因縁を生かされて生きていることを知らされたのでした。