026言葉に学ぶ

荒木智哉

私たち人間は言葉で迷い、目覚める存在です。例えば、私に対して向けられたある一言でその人に疑いをもったり、その人を信じられなくなります。一方で私の心に強く印象に残った一言が人生を生き抜いていく上での大きな支えになるということもあります。

私がここ数年間、自分なりに続けていることなのですが、自分の心に響く言葉、強く印象に残った言葉を書き止め、残しておくことにしています。最初はわずかだったものでも今では膨大な数となりました。後から読み返してみると私が感じていたこと、疑問に思っていたことなど、その時々の私そのものがそこにあることに気づかされました。その中でも特に心に響いた言葉は「必要なのは勇気ではなく覚悟」という言葉です。

これは自分自身が思い悩んだ時、真っ先に頭の中に浮かんでくる言葉です。自身が困難な状況に立たされた時に、今までは自分の外にあるものを変えることで解決を求め、状況を自分の都合にいいように変えようと行動する、そういう勇気をもつことが正しいことなのだと思い込んでいました。いつも困難な場面から逃げ出すことばかり考えており、置かれた状況や悩んでいる自分を見つめることが二の次となっていたのです。自分の足元がしっかりとしていないのに、次の一歩を踏み出すことなどできはしませんし、もし踏み出したとしても同じような不安定な道を歩き続けることを繰り返すだけで、根本的な悩みの解決とはなっていないのです。つまり、自分の置かれた状況から逃げ出さずに、しっかりと自分を見据える覚悟をもつことが大切なのだと、この言葉から気づかせてもらいました。このようにある言葉によって自分自身が見失っていたこと、今までに考えていたことが実は思い違いだったということに気づく、これこそが言葉に学ぶ生活ではないでしょうか。