折戸順子
ちょうどツバメが巣立ちの準備を始める6月の夕方のことです。やけにせわしく数羽のツバメが鳴きながら低空飛行を繰り返して飛び交っているので、気になって外へ出てみると境内にヒナが飛べずにバタバタとしていました。よく見ると羽の付け根に傷を負って出血し、親鳥たちの誘いに何とか飛ぼうとするのですが、まったく飛べる状態ではありません。痛々しそうでこのままではカラスや他の動物に狙われてしまいそうで放ってはおけず、近くの獣医さんに連絡したら「連れて来てください」との返事に、早速住職に捕まえてもらって連れて行きましたが「最善の処置と餌は与えてみますが、恐らく助からないと思います」と言われました。とりあえず預かってもらってホッとして帰ってくると、あたりは暗くなってきているのに、急に姿が見えなくなったヒナを捜し求めて親鳥たちが何度も低空飛行を繰り返すそのけなげな姿に涙が出てきました。「ごめんね、取り上げてしまって。でもお医者さんで治療してもらっているからね」と心の中で呟いていました。しかし、これは人間の発想にしかすぎません。
今年は例年になく多くのムカデを見つけてしまい、そのたびに何のためらいもなく殺虫剤をかけていました。先日もまたムカデを見つけて殺虫剤を…。その時ふと思いました。もしあのツバメが私の苦手な生き物だったらどうしていただろうと…。
親鸞聖人七百五十回忌御遠忌テーマである「今、いのちがあなたを生きている」のお言葉の重みが私の心にズッシリとのしかかってきました。