渡邉 恵
ご門徒の家にお参りに伺った時に、こういうお尋ねがありました。「私の実家の母親の法名を、この家のお仏壇に入れてもよろしいですか」と。その時、私は、「それはよろしいんじゃないですか」と言いましたら、安心された様子でした。その理由をお聞きしますと、「実家の兄弟といろいろありまして、私が法名を引き取ったのですが、どのように扱えばよいものかと悩んでおりました。自分の気持ちとしては、この家のお仏壇に入れてあげたいと思ってはいましたが、周りから、よその家の法名を自分の家の仏壇に一緒にするのはよくないなどと、いろんな声を聞かされ悩んでおりましたのでお尋ねしました」と、このように言われました。
お仏壇に関してこのようなことはよく聞くことです。この場合のように、他家の法名を入れてはいけないと考えた時のお仏壇の中心は、ご先祖ということになると思います。ご先祖が中心のお仏壇であれば、当然他家の法名は入れることができない訳で、その家の先祖だけのものです。
そこで考えていただきたいことは、真宗のお仏壇の中心には、阿弥陀如来がご本尊として安置されているということです。しかし、そこにお参りしている人たちは、ご先祖が中心と思ってお参りしています。そうしますと、阿弥陀如来が中心に安置されておりながら、大事なことがどこかへ行ってしまった状態です。ここに、この問題の大切な点があると思います。
私たちがお参りをする時、どこに向かってお参りをしているのか。ご先祖が中心なのか、阿弥陀如来が中心なのか、何を中心にお参りをしているのかをはっきり確認することが、このご門徒さんが言われたことの問題を解くカギであるように思われたことです。