018満之に聞く

伊藤英信

今月は清澤満之先生についてお話をすすめております。

そろそろ夏の虫の声が聞こえてまいります。蝉やキリギリスの声は、時に心を癒してくれます。また時には、「よく聞こえますか」と私の耳の働きを確かめてくれているようです。梅雨は大地を潤し、さまざまな生命の糧を育んでくれます。空気も日光も、木々の緑も、そして虫の音色までもが、私の存在にとって何一つ欠かせないものであることを、つい忘れてしまいがちです。

自然をも支配下に治めたような錯覚に陥って生きている現代人に対して、清澤満之先生は、自分がこの世に存在する根拠を「絶対無限の妙用(みょうゆう)」「一大不可思議の妙用」「他力の妙用」と表現せられました。自分の思いや計らいに先立って、さまざまな人々や物との深い結びつきのまっただ中に、自分を生かしてくださるはたらきを「妙用」といわれるのです。

「絶対無限の妙用」とは、無量寿、無量光たる阿弥陀仏のはたらきであります。私たちは、清澤満之先生のお言葉を通して、日々の生活が何を拠り所として生きているのか、まさに自己の立脚地を問われているのであります。

NHKテレビに「不思議大自然」という番組があります。さまざまな地球上の動物の不思議な生態をとり上げ、それを知識として理解しようとするのでしょうが、不思議とは本来、人間の思慮や分別が至らない働きであり、私もまたその妙用に生かされていることを決して忘れてはならないと、先生は私たちに問いかけていてくださるのです。