015 住職とは、坊守とは

西寺真也・西寺浄帆

真也「ああ、そろそろ住職にならないかんなあ。僕は住職に向いてへんと思うんやけどなあ」

浄帆「いつかさ、※竹中先生が『住職はやりたくない人がやったほうがいいですよ』って言ってたよね」

真也「ああ。そうやったよなあ。あれは、住職が誰の意見も聞かんと勝手に一人でお寺のことを思い通りにしてしまうって話やったよなあ」

浄帆「『おれは門徒にもたれたりと、ひとへに門徒にやしなわるるなり』(『空善聞書』)

っていう蓮如さんの言葉も紹介してくれて、『住職は門徒さんを信頼して甘えられたら一番いいですよ』とも言ってたよね。」

真也「そうかあ。そう言えば最近『本来の住職は門徒に仕える者です。門徒さんは聞法の先輩ですから』って言う話を聞いたんさ。確かに偉そうな住職の話なんか誰も聞きたくないもんなあ」

浄帆「そうだねぇ。自分が門徒さんより聞法の先輩と思ってたら話は聞けないよね。だから住職って門徒さんに『いっしょに聞法しましょう』って迎えてもらってるのかも知れないね。親鸞上人もご自分のことを『門徒』って書いてるしねぇ」

真也「じゃあ、一(いち)真宗門徒として住職の座に着かせてもらうってことなんかなぁ」

浄帆「あ! じゃあ、私も坊守になるんだね。坊守の本来の役わりってなんだろう。お茶出し?」

真也「おいおい。そういうもてなしも大事なことやけどさ。この前知り合いの坊守さんが『坊守に聞法させない住職なんかとは別れなさい!』ってすごい怒ってたよ。やっぱりお寺の環境がさ、坊守が聞法できるようになっていないとなぁ。」

浄帆「聞法する坊守かぁ。私いまの時点でぺこぺこして、へつらってばっかりだし。なんか自信ないなぁ。じゃあ子どもおいて聞法にいってきまーす」

真也「えっ! それはちょっと待って。子育ても聞法やんか。ここで聞法できやんだら、どこいってもできやんやろ。しかもぺこぺこするのも必要なんやしさあ。問題はさ、門徒さんらを尊敬しとるかどうかなんやろ」

浄帆「『人間を尊敬することによって自ら解放せんとする者』(『全国水平社創立宣言』)って言葉があったよね。そういう者に私はなりたい…」

※竹中智秀先生。前大谷専修学院長。二〇〇六年示寂。

(南勢一組 本覚寺候補衆徒 二〇一七年八月上旬)