001 新年を迎えて

大町 慶華

新年あけましおめでとうございます。

年末の桑名別院本統寺の報恩講には、たくさんの方々にお力添えをいただき、心より感謝申し上げます。

本年も三重教区と桑名別院をどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、今から六十二年前、宗祖親鸞聖人七百回御遠忌をひかえて、宮谷法含宗務総長が、「宗門各位に告ぐ」として宗門白書をだされました。その白書に示された内容は現代においても、わたしたちに呼びかけられているようでなりません。この白書の一部を引用します。

この憂うべき宗門の混迷は、どこに原因するのか。宗門が仏 道を求める真剣さを失い、如来の教法を自他に明らかにする本務に、あまりにも怠慢であるからではないか。今日宗門はながい間の仏教的因習によって、その形態を保っているにすぎない現状である。寺院には青年の参詣は少なく、従って青壮年との溝は日に日に深められてきているではないか。厳しく思想が対立し、政治的経済的な不安のうずまく実際社会に、教化者は、決然として真宗の教法を伝道する仏法者としての自信を喪失しているではないか。寺院経済は逼迫し、あやしげな新興宗教は、門信徒の中に容赦なくその手をのばしてきている。教田の荒廃してゆく様は、まさに一目瞭然であるが、われらは果してこの実情を、本当に憂慮し、反省しているであろうか。まだ何とかなるという安易をむさぼる惰性に腰かけているのではないか。大谷派に一万の寺院、百万の門信徒があるといいながら、しかも真の仏法者を見つけ出すことに困難を覚える宗門になってきているのである。

(中略)

宗門は今や厳粛な懺悔に基づく自己批判から再出発すべき関頭にきている。懺悔の基礎となるものは仏道を求めてやまぬ菩提心である。混迷に沈む宗門現下の実情を打破し、生々溌溂たる真宗教団の形成を可能にするものは、この懺悔と求道の実践よりほかにない。

(『宗門各位に告ぐ』宮谷法含一九五六年『真宗』四月号)

と宗門の現状を訴えかけています。

この白書を受けて同朋会運動が、提起され「家の宗教から個の自覚へ」とスローガンを掲げて同朋会運動をすすめてきたことです。しかしながら、今日の現状をみれば、六十二年前にだされた白書の内容と何も変わっていません。世の中は経済至上主義の中、人間関係の希薄化、自殺者の増加、いじめ、核家族化、独居老人の孤独死、過疎化など現代社会が抱えている闇に、なかなかお寺が対応できない現状であります。なんとかこの現状を打開するために、教区では『「一ヵ寺・一ヵ寺」の活性化を願って、<一人と出会う>』をテーマに教化委員会で検討しています。現代社会が闇に包まれているならば、まさしく宗祖は本願念仏の教えこそが「無明の闇を破する」と示してくださっています。大変な時代であるからこそ、一人でも多くの方に、お念仏教えが伝わるよう努力をいたしていきたいと思います。宗門白書の内容を常に、怠惰な自分への忠告とし、聞法精進してまいりたいと思います。

宗門は二〇二三年に、親鸞聖人御誕生八五〇年・立教開宗八〇〇年慶讃法要を、厳修憂する予定であります。先の御遠忌が住んで十二年後のことであります。この法要に向けて様々な計画が、現在宗務審議会で検討されていることであります。今年五月には答申され、内局方針が示され、内局巡回がおこなわれる予定であります。内容がしめされたならば、どうかご意見をくださるようおねがいいたします。

(二〇一八年一月上旬 三重教務所長)