029上から目線

松井 茂樹

 今年の春に、教如上人御遠忌のために本山へ行ってまいりました。きっかけは大学時代の友人が一度みんなで集まろうということ。ただ集まるのではなくて、本山の春法要のお勤めで会おう、という話になりました。

 正直私は「本山のような敷居の高い所で会おうなんて、正直困ったな」と思っていました。それはなぜかというと、私以外の方は、何度も本山出仕(お勤めに出ること)をされている方ばかりだったからです。しかし、何事も経験と思い、思い切って本山へ上山することにしました。

 本山へ行くと、大学時代の友人や先輩達にお会いすることが出来ました。ただ、皆と話をすればするほど、自分がこの場にいてはいけないように感じました。余りに気になったので、今回お誘いをいただいた友人に「場違いな所に来てしまったかな?」と聞いたところ、友人は不思議そうな顔をして、

 「大谷派の僧侶が本山に来ることのどこが場違いなんだ。第一ここに来ている方々は皆、真宗の教えに触れにここまで来ているのじゃないかな。そんな誰が上とか下とかを決めるために皆が集まっている訳じゃないと僕は思うぞ」
と言いました。

 私はハッとしました。今までつまらない劣等感で場違いだと思っていた自分の心の中を一気に見抜かれたように思いました。常に自分のことを中心に考えている自分に改めて気づかせて頂きました。

 私達は普段、自分が高い所にいて、現代風で言う「上から目線」という見方で、世の中を見ていると思います。しかし、実は自分自身ではどうしようも出来ない力やはたらきによって生かされていることに気付くことが真宗における第一歩だと私は思います。

 毎日の生活の中で、私達が生きていることの大切さやご縁に改めて気付き、そのことに感謝する。それが真宗の教えに触れることだと思います。

(中勢二組・淨得寺住職 二〇一三年一〇月中旬)