001年頭所感

木嶋 孝慈

 初春を寿ぎ、お慶びを申し上げますとともに、本年もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
 皆さま方には、新しい年を迎えられて、心新たに、今年こそは良い年にしようと、それぞれに、今年一年の希望と申しますか、「志」を新たにされたことと存じます。

 毎年年末恒例になっています、その年の世相を表す漢字は、九三二年ぶりに日本の広範囲で観測された金環日食や、世界一の自立式電波塔として、金字塔を打ち立てた東京スカイツリーの開業。
 そして、ロンドンオリンピックでの金メダルを筆頭に、日本史上最多の三八個のメダル獲得や、iPS細胞の研究で、金メダルに等しいノーベル賞を受賞された山中教授。
 さらには、年金資金運用の詐欺事件や、生活保護費の詐欺事件。消費税増税の税金問題等、金かねにまつわる「金」でございました。
 そして世間では、尖閣諸島の問題をはじめ、北朝鮮のロケット発射など外交問題が山積する中、自民党が政権に返り咲き、危機突破、経済再生を掲げて、第二次安部内閣が発足しました。

 確かに、何か目標を立てて、それに向かって、一生懸命になる。一つのものを極めるために、金メダルを取るために、努力するということは必要なことなのでしょう。

 しかし、一等賞をとるために、他のものを踏みつけ、排除し、そのことだけに執着するといったあり様がいいのでしょうか。

 「自然法爾(じねんほうに)」という言葉がございます。
 「自力をすて、如来の絶対他力にまかせきること。人為を捨て、ありのままにまかせること」ということでございますが、なかなか、了解できない真理であります。
 
 我々は、何か目標を立てて、そのことを成就しようと一生懸命になる。でも、成就できなければ、そこで怒り、腹立ちの心が満ち溢れてしまいます。
 また反対に、目標が達成されれば、そのことだけに満足できず、また新たな目標を立てて、あくせくあくせくしてしまいます。
 我々の欲望というのは、とどまるところを知りません。
 一つの欲望をかなえるために、どれほど他人を踏み付け、傷つけ、排除してきたことでしょうか。
 そういった「我欲」にとらわれている自分の有り様が照らしだされ、「我も、他の者も、共に生き合える世界の発見」というものが、今こそ求められているのだと思います。
 
 そういった世界の有り様を映し出してくださるのが、「南無阿弥陀仏」のお念仏ではないでしょうか。
 本年も、ともどもに、「お念仏」のいただける生活をしてまいりたいと存じます。
 
  あらたまのとしの初めは祝うとも 阿弥陀仏のこころ忘るな 

(三重教務所長 二〇一三年一月上旬)