022おかげさま

安田多恵子

インタビュー・スピーチ・挨拶などで度々、「おかげさまをもちまして…」とか「おかげさまで…」と耳にすることがあります。みなさんも普段にこの言葉を使われていると思います。

この「おかげさま」という言葉ですが、誰に、何に対して「おかげさまな」のでしょうか?国語辞典で調べてみますと、一つには、相手の好意や世話に対する感謝の気持ち、人から受けた力添えや恩恵の言葉であり、それともう一つには、神仏の加護、感謝という、二つの意味が書かれておりました。

私たちは、自分一人の力でやってきたつもりが、失敗や困難に陥って自分の限界を知り、周りの方々の好意や恩恵によって支えられていたことに気づかされた時、「おかげさま」という言葉で感謝を表し伝えます。ところが、年々重ねていくうちに、一つ目の意味だけでなく、より深い二つ目の意味も含んだ「おかげさま」を言っている自分に気づかされます。

幼い頃を思い出しますと、近所のおばさんや寺にみえる方の口からは、「おかげさんと元気に…」とか「こうしておかげさんとお参りに来られました」とか、「おかげさま」の言葉をいつも耳にしていたように思いますが、近頃はどうでしょうか?昔の人はいつもそのことを身近に感じて生活をされていたように思います。

真宗の教えを分かろうとして難しい言葉や、知識を得ようとし、また知ったような錯覚をしていることが多い私なのですが、阿弥陀様という大きな加護に気づかされた時、頭が下がり、「おかげさま」や「南無阿弥陀仏」のお念仏が口から出るのでしょう。それが信心のような気がします。難しい言葉や知識ではなく、まずは自分自身が「おかげさま」に気づかされれば、と。