001倶会一処(くえいっしょ)

橘秀憲

明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いいたします。

さて、桑名別院報恩講も皆様のおかげをもちまして滞りなく勤めさせていただきました。全国52の別院の中でも最も遅い日程だと思いますが、師走の慌しい中、多くの方々にご参詣を賜り厚く御礼を申し上げます。

『蓮如上人(れんにょしょうにん)御一代記(ごいちだいき)聞書(ききがき)』の中には、赤尾の道宗(どうしゅう)が申された、

一日のたしなみには、あさつとめにかかさじと、たしなめ。一月のたしなみには、ちかきところ御開山様(ごかいざんさま)の御座(ござ)候うところへまいるべしと、たしなむべし。一年のたしなみには、御本寺(ごほんじ)へまいるべしと、たしなむべし。(真宗聖典864頁)

という言葉で、真宗門徒のたしなみが示されております。

昔に比べて交通の便が良くなったとはいえ、遠方より足を運んでくださることには頭が下がりますし、この場が約400年の間、綿々と相続されてきておることに歴史の重さを感じずにはおれません。

宮城顗(しずか)先生の『人と生まれて』という本の中に、「救われるということは、場所をたまわること」という一文があります。人間関係が希薄になり混迷する現代社会の中において、自分の立つ場が見えなくなって孤立している人が多いと思うわけですが、関係性の回復、繋がりをもつことが今こそ大切なのではないでしょうか。居場所を見つけること、すでにそういう場があるということになかなか目を向けられないくらい、時間に追われている難しい社会になっているのでしょうが、人には場所・立脚地が必要なのだと思います。『仏説阿弥陀経』には「倶会一処(くえいっしょ)」という場が説かれてあります。

宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌のテーマは「今、いのちがあなたを生きている」ですが、三重教区では「共に大地に立たん」というスローガンを立てて取り組んでいます。「共に」という世界、共に立つ場所をこの社会に提示していかなければならないと思うわけです。親鸞聖人の教えに触れる、出遇いの場所をいただいていきたいと思います。