029赤とんぼ 

渡辺美和子

実家の母は、今年72歳を迎えました。数年前から耳の聞こえが悪くなり、それをとても苦にしていました。たくさんの病院を訪ねてどうにか聞こえるようになりたいと願いをもっていましたが、老人性難聴という現実を受け入れ、補聴器を付けました。そして孫娘に教えてもらい携帯電話でメールをどしどし打っているようです。

そんな母の姿に、私はどうなんだろうと思い返して見ました。生老病死と言いますが、何時やって来るか分からない私の姿、老も、病も、死も必ずやって来ることは分かっていても、思い通りにならないその現実を率直に受け入れることができるとは思えません。その時にジタバタしないようにと、桑名別院の人生講座に参加し、いろいろな方のお話を聞いていきたいと、月一回朝出かけるようになりました。でもそのことがもう、自分の思い通りにしようとしているような気がします。

今、私はジタバタしているのでしょうか。今の自分に焦っているのでしょうか。

今朝、境内を掃除していたら、枯れ枝に真っ赤な赤とんぼが二匹仲良く止まっていました。今年の夏はあんなに暑かったのに、もう季節は秋なんだなぁと思いました。どんなにジタバタしても、思い通りにならなくても、やって来るものはやって来るのだなぁと。毎日毎日同じようで、その時はかけがえのないものだと思うのですが、ありのままの自分を受け入れていくことはなかなか難しいことです。

自分を振り返り考えてみますと、日々の生活の中に聞法の糸口はあるものだと思います。その糸口を手がかりに生きていけたらと思っています。