002 自利利他円満

山口 晃生

法隆寺の玉虫の厨子に捨身飼虎の図があります。これは、お釈迦様前世の物語で、修行中、森の中で出産直後の虎に出遭います。この虎は空腹のあまり今にも我が子を食べようとしていました。それを見たお釈迦様は、自ら虎の餌になろうと近くの崖に上り、そこから飛び降り、自分を殺してから餌食になり、親子の虎を救ったという有名なお話です。これは究極の「慈悲心」や「利他行」といわれます。しかし、私には今一つ納得がいきません。

私達が頂いている仏教には、「自利利他円満」という教えがあります。自分が幸せになることが他人の幸せにもつながり、他人の幸せが自分の幸せになる。お互いに幸せになり、喜び合える世界。私は、これこそが真実(ほんとう)の仏道ではないかと思います。

我が家の近くに岡山という小高い山があります。昔は焚き木を集める等、管理され遠足のメッカとしても親しまれておりましたが、高度成長期以後は荒れ放題、人も立ち入れない状態で、いつしか心無い人が壊れたテレビや洗濯機等の廃材を平気で捨てていくゴミ捨て山になってしまいました。このままではいけない。以前の様に人々が遊べる里山にしようと、二〇〇五年「岡山を愛する会」が発足しました。

私も賛同し入会。月三回の奉仕作業に取り組んでおります。しかし、一〇年の歳月は確実に力を奪います。脱会者も多く、五〇人いた会員も現在は二〇名程になり、しかも高齢化し維持管理も難しく、新会員を募るのですが一向に協力者は集まりません。寧ろほんの一部の人からは「俺らには関係ない。奴ら暇ですることがないからやっているだけや」としか見てもらえないのが残念でなりません。

郷土の宝でもある自然豊かなこの「里山」を、人々の集まる憩いの場として今後も守っていく事で、地域住民の皆さま方に喜んでもらえるのであれば、奉仕作業の苦労も報われ、私達会員皆の喜びに変わります。また、そうすることがこの地に生まれ、育てられた者の故郷への恩返しと、今日も仲間と共に額に汗して頑張っております。

(三重組・蓮行寺門徒 二〇一六年一月下旬)