036まことの拠り所

折戸 芳章

 「じぇじぇじぇ」、「今でしょ」、「倍返し」、「アベノミクス」、「お・も・て・な・し」と、今年の流行語大賞候補が他にも多く思い出されます。

 候補にはなりませんでしたが、『広辞苑』にも載っていない「誤表示」という言葉が流行しました。有名ホテルのレストランなどでメニュー表示と異なる食材を使用していた問題で、「偽装」ではなく「誤表示」だと釈明に繰り返し使用したことから生みだされた流行語です。人は思い込んでしまうと、それが偽装であれ、誤表示であれ、間違っていることさえ分からなくなり、自分をも見失ってしまうものなのです。

 今年の『本山法語カレンダー』一〇月で「世の中が便利になって一番困っているのが実は人間なんです」とお教えいただいています。

 私たちは、まさに日常の便利さと幸せを追い求めてきた結果、本当の拠り所までも見失い、間違え、さらには偽装し誤表示していたことに、東北沖地震を発端に原発をはじめとする諸問題に苦慮することで、今になってやっと気づかされたのではないでしょうか。

 「頼りにならんものを、頼りにすることほど一番頼りにならんのに、その一番たよりにならんものを一番頼りにしているから、本当に頼りにならん」のです。
 しかし、頼りにならんものを頼りに生活してきたことは事実であり、のがれられません。          

 いよいよ今年も残り数日となり、来年春には三重教区・桑名別院宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要が勤まります。
 御遠忌を機縁に、私たちの日常の生活形態が偽装と誤表示を拠り所にして、間違った思い込をしていないかを問い直し、私の身の事実を親鸞聖人の教えによって顕かにしていかねばならないのだと思えてなりません。

(南勢一組・法受寺住職 二〇一三年一二月下旬)