025為作大安

芳岡 恵基

 私は、二五年程前に結婚しまして、その時にお祝いとして、あるご老僧様から「為作大安(いさだいあん)」と書かれたお軸をいただきました。

 このお言葉は、「嘆佛偈」の中にあり、「心に安らぎを与える仏となります」という仏様の誓いであります。
 最初、このお言葉をいただいた時は、私が妻を苦から救い心に安らぎを与えるのだと思いましたが、よくよくそのお言葉のお心を尋ねますと、実は、夫婦として共に苦しみ悩んでいる私達を救いたいと願い、誓われた仏様のお心、つまり、お念仏を共にいただいていく生活をしなさい、という気持ちでいただいたお言葉であったと思います。

 一度日常生活を見直しますと、私達は自分の思いを中心として、あらゆることに条件を付ける生活をしているのではないでしょうか。都合のいいことばかりを追い求め、人には厳しく接するのに、自分には甘い。このような生活で、本当に心が安らぐのでしょうか。

 お念仏をいただく生活を送ることによって、「常に己に厳しく接し」、「初心を忘れることなく」という仏様のお心が、夫婦生活の中で大切なことであると解らしていただくのではないでしょうか。

 事実を事実と知らしてもらった時に、初めてお念仏をいただく身となるのであり、お念仏をいただく身となり凡夫の自覚に生きることこそ、真宗門徒の生活ではないでしょうか。

(三重組・翠巖寺住職 二〇一三年九月上旬)