035恩に遇う

伊藤誓英

先日、私が住職をさせていただいている寺にて報恩講が勤まりました。

今年は8月に東本願寺にて得度式を受けた10歳の長男が、初めて出仕をしました。衣を着用し、法要が始まる前に最終確認をするために、長男と共に堂内に入りましたら、お集まりいただいていた参詣の方々から歓声があがりました。「りっぱになって」、「かわいらしい」、「おめでとう」。初披露となりましたので、写真のお願いもたくさんありました。

こうしてみなさまに温かく迎えてくださったことに深く感謝するとともに、自分自身も30年前、このように迎えてくださったことを思い出しました。長い年月が経っていますのではっきりとは覚えていませんが、今の長男の状況と照らし合わせ、たくさんの見守りとお支えを想い、改めていただいていた恩に、これまで気付けなかった恩に出遇わせていただきました。

報恩講は恩に出遇わせていただける集いでもあります。それは、親鸞聖人のお言葉を通して、そこに集う人々を通して、750年も大切にされてきた歴史を通して。自分がいただきつつも気づかずにいる大切なお支えを色々な姿を通してお伝えくださいます。恩を知るということは「自分が自分になった背景を知る」ことであると先人は教えてくださいました。

もうすぐ新しい年を迎えます。報恩講にて恩に遇い、その恩に支えられて新年を迎えるという歩みが今後もなされますよう念じます。来年、どうぞ報恩講にお参りくださいませ。