023分別奮闘記

仁宗寿

8月も中旬となり、夏真っ盛りです。桑名別院境内においても蝉の声が響いています。うだるような暑さの中、皆様方は如何お過ごしでしょうか?

私はというと、今年から社会人1年目であり、慣れない環境に右往左往しながら、日々を生活することに必死になっています。朝から自分の出したゴミの分別に奮闘した後、目の前の仕事をこなすことに躍起になっています。

私たちは慌しく過ぎ行く日暮の中で、折に触れて様々な方々と接しています。当然、皆さん誰もが一人一人違う考え方を持つ他人同士ですから、意見が合わなかったり、お互い好き嫌いがあったりすることと思います。私たちは好きな人・嫌いな人を分けて、自分の居心地のいい環境を作ることに必死です。

人間関係と同様に私たちは、自らの善し悪しによって物事を分けることに毎日奮闘しながら生きているのではないでしょうか。自らの考えを正しいものとして、人と比べ、人を責め、苦しいことを避けて、楽しいことを求めることが世間の常識ではないかと思います。

善悪や苦楽といった物事を分別する心にとらわれる、そんな私に「あなた自身はどうなんですか。仏教は内観道なんです。世を超えなさい」という言葉を学生時代に恩師からかけていただいたことを想い出します。

自分にとってのややこしい不都合を他人や環境のせいにして逃げていた私に、ややこしいのは世の中ではなく、何よりもこの私であったことを恩師の言葉を通して、気付かされたように思います。

仏法を聞いても、なんでも自分の思い通りになったりする訳ではありません。仏法とは、右往左往する人生の苦悩に向かい合い、それを引き受けて生きていくことができる力になるものではないでしょうか。