016身体の不調

藤井信

昨年の1月に長女が誕生しました。2人目の子どもとあって、喜びもひとしおでしたが、当然ながら忙しい毎日が待っていました。そんなとき、身体の不調が突然訪れました。

身体がとても重く、痛みや痺れなどの様々な病状が起こり、日に日に悪化してくるのです。産まれたばかりの娘を抱くことさえ、辛く感じるほどでした。普段は医者嫌いの私も、たまらず整形外科を受診すると、診断の結果は頚椎と腰椎の椎間板ヘルニアというものでした。

私は元々、丈夫な身体ではありませんが、今まで大した病気もせずに過ごしてきました。しかし、この病気により身体が痺れ、力が入らなくなりました。当時は、自分の置かれた状況を素直に受け入れることができませんでした。そして、この不調がきっかけで、いろんな悪循環を呼びました。マイナス思考の連鎖です。子どももまだ二人とも幼い、母親も介護が必要になってきた等々。

いつもは何でもないことがとても気になり、人の発する何気ない言葉も棘(とげ)に感じられました。何か心理的に追い詰められる思いのなかで、とにかく早く元の身体に戻りたいと願っていました。

私は、病気になる前から詩人の坂村真民さんの作品を愛読しておりました。坂村さんは、死ぬほどの大病を患ったことで、失明同然になった方です。

その方の詩に、

「病がまた一つの世界を開いてくれた 桃咲く」

というものがあります。私はこれまで、この詩を何度も読んでいましたが、自身の病を通して、この言葉が全く違う姿を見せてくれたように感じました。私は、今まで健康な元の姿に戻ることだけが救いだと思っていましたが、この詩に出会い、健康な元の姿に戻ることだけが救いではなく、病や苦しみが新しい世界を切り開くきっかけとなるということを改めて教えられました。

しかし、少し体調がよくなった今、その時の思いを忘れがちになっています。都合のいい自分の心を教えられました。