019人間に帰ろう-ハンセン病問題-

加藤淳

いよいよ来年、真宗本廟において宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要が厳修されます。法要中の、4月12日から14日までの三日間、「第8回真宗大谷派ハンセン病問題全国療養所交流集会」が企画されています。

「人間に帰ろう-しんらんさんと考えるハンセン病問題-」というテーマで交流集会が開催されます。なぜ大谷派がハンセン病問題に取り組むのかといえば、「無批判に国政政策に追従して隔離を推進した」「『らい予防法』がもっている人権侵害を見抜けなかった」「その中で私たちは慰問布教という形での現状肯定、あるいは自己弁護をしてきた」という三つの誤りを犯してきたからです。

『らい予防法』が廃止される1996年まで、国は隔離政策をとってきたこともあり、ハンセン病は恐ろしい病気であるなどの誤った理解がごく最近までされてきました。

親鸞聖人は、私たちに先立って、人間であることの根拠を明らかにされた人です。また、阿弥陀のはたらきを私たちにまで伝えてくださった人でもあります。

では、阿弥陀のはたらきを感じ取ることはどういうことかを例えて言うなら、外で風が吹いているとします。風そのものには、臭いも色もありませんから、風を直接確認することはできません。風が吹いていることは、外の木々が揺れていたり、窓のカーテンが揺れることによって、また、私たちの体に当たる感覚によって風を感じ取ることができます。風と同じように、阿弥陀の教えに生きられた方の生活を見ることによって、阿弥陀を感じ取ることができると思います。

ハンセン病回復者で歌手である宮里新一さんのコンサートで、交流集会が始まります。「ハンセン病回復者は、社会の中で肩身の狭い思いをして生きてきたんです。そういう人たちの思いを代弁したのが自分の歌なのです」との歌に込められた宮里さんの生き方にも触れていきたいと思います。

ハンセン病を患ってこられた方々の生の声を聞くことによって、つい最近まで隔離を支えるような社会を生きてきたということに気付かせてもらえるのです。そしてまた、都合の悪いものを排除しようとする自分自身がそういう社会を支えているのだと教えていただきました。

ハンセン病問題を学んでいくことが、女性差別、外国人差別、障害者差別など、あらゆる差別を自覚させていただく手掛かりに繋がれば幸いです。