014地球が優しい

梅田良惠

平成23年3月11日、地震、津波により東北地方を中心に未曽有の被害を受けました。

先日あるラジオ番組で遺伝子を研究している学者が震災に関連して「微生物も鳥も植物もすべての生物は共通に遺伝子の暗号を持っており、生き物は全部つながっている。私たちが生きているこの地球は人間様だけの地球ではない」と言われました。私は「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」という言葉を思い浮かべました。

「草、木が悉く仏と成っていく」とはどういうことでしょうか。成仏というのは、人間だけが仏と成るのではないのです。人間や人間以外の動物、いや草や木などを含めた自然環境そのものが仏と成っていくことを意味しているのでしょう。逆に言えば、草や木が成仏しなければ人間も成仏することができないということです。

多くの企業が自分たちは「地球に優しい」企業だと言います。世間では「エコ」を合言葉にして自然に優しい生活をしているつもりになっています。しかし、人間が文明生活をすることそのものが自然環境から見れば傲慢であるということです。

今、福島の原発では放射能で汚染された水を海に垂れ流しています。人間は、海という自然があるおかげで、危機を回避できているのです。人間が地球に優しいのではありません。「地球が人間に優しい」のです。

海といえば、親鸞聖人が書かれた「正信偈」に5回、「海」という文字が使われています。親鸞は海を、時に如来の本願力の大きさとして表し、時に人間の娑婆世界の苦しみの深さとして表しておられます。

原発の事故は天災ではありません。原発は危険なものであると知りつつ、絶対事故は起きない安全なものだと自分自身を欺いて、その恩恵に浴してきた報いです。東京に原発がないのがその証拠でしょう。危険なものは近くに置きたくないのです。

今、私たちは娑婆の現実と向き合うことが必要です。現実と向かい合った時、初めて私たちは本願海に生かされていることに気づくのではないでしょうか。