021蜂

鈴木勘吾

先日、アパートの外で子どもが騒いでいました。「お父さん、蜂がおるに!」私は慌てて殺虫剤を手に走り出て軒下を見ると、足長蜂が巣を作っていました。殺虫剤をシュート振りかけて、落ちてきた蜂を靴で踏みつけ、巣も棒で突いて落としました。子どもたちが刺されなくて良かったと安心しました。「蜂は人を刺すで、退治せなあかんのや」と長男の声がしました。それは私の本音でもありましたが、おや?と疑問に思いました。蜂は悪くありません。私の都合に合わないだけです。私に不利益を与えるかもしれないので、予防措置として駆除しました。そのことを子どもに伝えました。

「蜂は悪くないよ。お父さんが刺されたくないから、先に退治しただけ。もし家の近くに巣を作らなかったら、退治しなかったよ」子どもは自分が叱られたのかと、怪訝な顔をしながらも「ふーん」と答えました。

蝶や甲虫なら捕まえて虫かごで飼うでしょう。蟻ならそのまま捨て置くでしょう。虫に良し悪しはありません。自分にとって良く見えたり、悪く見えたりするのは「こうあって欲しい」」という自分の都合で見るのであって、思い通りなら「良い」そうでなければ「悪い」と決めてしまいます。「良し悪し」を決めるのは私の思いでした。

物事が思い通りになれば「当たり前」としてやり過ごしますが、当てが外れると、落ち込み、怒り、時には自分以外のものを攻撃します。挙句、自分の思い通りになる世界を夢見ていたことに気づかされました。