030落とし穴

岩田信行

お墓のことで質問を受けました。聞けば、テレビ(番組)でお墓の正しい参り方など、H・Kさんがこと細かく指南されたとのことでした。

以前も先祖の祀り方を指南して、写真の掛け方の手ほどきがあったそうです。その時も「何度言っても埒があかなかった仏間の写真の位置が様変わりした」と名古屋のお寺さん(友人)が嘆いていたのを思い出しました。影響力、はなはだ甚大のようで「なかなかイイこと言うぞ!」という評判も耳にします。H・Kさんばかりでなくテレビなどでも、M・Aさん、E・Nさんも人気で、前世を語り、怨霊や守護霊など霊魂の話、星回りの運命論やそれに基づく人生論など、耳目を集めている模様です。

ところで、阿弥陀の本願に第5願から第10願に「六神通」が誓われています。いわゆる「神通力(じんつうりき)」のことです。

もとより、最後の第10願「漏尽智通(ろじんちつう)の願」が「無我」仏智眼をあらわして、この六神通の要になります。他の五神通、これは外道(げどう)にも通ずる「通力」と言われますが、それらが仏智の裏打ちをもって「宿命智通(しゅくみょうちつう)」「天眼智通(てんげんちつう)」「天耳智通(てんにちつう)」「他心智通(たしんちつう)」「神足智通(じんそくちつう)」と古来称され、今日の私たちがイメージする「超能力」と質を全く異にしています。

それは決して空中を浮遊できるなどと言って、不思議な霊力(パワー)を誇示したり、前世を云々して他人の心を見通し手玉にとって思うままに人を操ったり、ということではありません。しかし、私たちにとっては、マジックと分かっていても物が消えたり現われたりすると「不思議だ!」とわくわくしたり、思わしくないことが続いて「どうしたんだろう?何かあるのかなぁ」と思っているところへ「霊が見える!霊が憑りついていますよ」と言われると「そんな馬鹿な」と思いつつも、どこか落ち着けずにモヤッとしたものが残ってすっきりしないというのが私たちではないでしょうか。

しかし、マジックにはちゃんと「タネ」があるように、前世や霊魂の話、運命論にはまっていく「落とし穴」がちゃんとあります。

さて、さてH・Kさんの手玉に取られていく、その落とし穴。しっかり見抜く眼を聞かしてもらいましょう。