001汝・凡夫なり 

磯野恵昭

新年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

この一年何事もないことを祈りたいものですが、そんなことはあり得ませんと教えてくださるのが仏法であります。また、もし何事もなければ学びの機会がないとも言えます。何を学ぶのかといえば、自分自身ということでありましょう。

私たちは何事もなく平穏に過している時、自分のことは分かりきったこととして考えています。ところが、思い通りにならないことや大きな困難にぶつかり、厳しい選択を迫られたり、道が見えず途方に暮れたりする時、思いもよらなかった心が現れてくるのです。善悪をわきまえているつもりであったのに、損をしそうになると、利益を優先したり権威にすがりつこうとする弱さ、小賢しさを知らされます。優しさや謙虚さをもっているつもりであったのに、追い詰められた途端、ひがみやねたみで相手を陥れようとたくらむ、卑劣さを教えられます。

このように、何事もない時の私はこうありたいという姿で過せるのですが、思い通りにならない現実によって、隠れていた本物の私が教えられる。この現実は「汝、凡夫なり」と呼びかける学びの場なのです。