034生命の流れに我が身を置く 

保井秀孝

私たち地球上の生物は全て遺伝子という同じ情報源からできており、祖先は同じで、今から約三十八億年前に遡るということが近年明らかになってきました。この生命の流れに耳を澄ますと、私たち生き物がみんな遺伝子という鎖でつながっているという、驚異の世界が見えてきます。

人間は、この祖先を共有する生き物の一つの種にすぎないのであって、私たちの生きる世界は人間中心に成り立っていないことが明らかになってきます。遺伝子の世界は、人間中心・自己中心の生き方や考え方を改めること、即ち、発想の転換の必要性を語っているように思うのです。

仏教の世界とは、実はそのような阿弥陀仏の真実に目を向けなさいと語りかけている世界なのです。自己中心に自分のことや世の中を見ることしかできない私たちの愚かさを指摘しているのが、阿弥陀仏の説かれている真実の世界なのです。しかし、人間はそのことに気づくことなく、相変わらず自己中心に世界を見、自分たちの目先の都合で自然を作りかえようと躍起になり、逆に自然にしばしばしっぺ返しを食らうようになってきています。そして、私たち自身も相変わらず自己中心に生きています。自分に都合よく家族を見、地域を見、社会を見、そして他人を見ています。そのことに気づかず、それが正しいことであるように錯覚しているのです。

生命の流れに身を置く時、私たちを育んできた世界や社会の大切さを思わずにはおれないのです。私たちはこの流れの中で生命を与えられて、今生きていることに気づいていかなければなりません。そこに新しい世界が見えてくるのです。こんな世界を親鸞さんは私たちに示されているのです。