019道をあゆむ

森英雄

今が一番いいんよ

あの時こうだったらというものはない

今ここに この時に永遠の命がある

いつも 今 全力投球

大石法夫

現在に安住できる浄土真宗のみ教えは、過去においては一切の後悔というものを残さない。未来については一切の不安がない。だからこそ、この現在に全力で生きることができる。もう少し余力を残していこうとかそういう計らいが人間を暗くする。それは、人間にまだ夢を見ているからだ。人間の思いは幽霊のように足がない。足がないということは、現在位置がはっきりしていないということ。東京へ行くのに「あなたは今どこにいますか」と聞かれて「さあ、どこでしょう」と言っていては道を歩めないでしょう。人生にはいろいろな落とし穴があり、誘惑もあり、回り道もあるでしょうが、そこに迷ったことも自分自身の本当の姿が見出されれば、無駄ということもなくなります。仏教の基本中の基本は「汝、自己を知れ」という一言であります。「仏の本願を信じ」ることが、仏のご本願が建てられたその理由が、他でもないこの自分自身の全体を知らせんが為であったと思い知らされることが肝心です。仏によって見出されたこの自分は何者かというと「いずれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定(いちじょう)すみかぞかし」(真宗聖典627頁)「さるべき業縁(ごうえん)のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」(真宗聖典634頁)という身だということです。だからそこに仏のご苦労が偲ばれるわけです。ただ惚れ惚れと仏のご苦労を偲び、この業の身をいただいたことの深さが感じられてくるわけです。

初めてこの人生に対する姿勢が決まってくる。人生に何かを期待するのではない。人生が私に何を願っているのかという声が聞こえてきて、初めて道を歩むことが始まります。もう一度大石先生のお言葉を繰り返します。

今が一番いいんよ

あの時こうだったらというものはない

今ここに この時の永遠の命がある

いつも 今 全力投球