015上山のご縁

宇野那智子

私はこの3年間、京都のご本山へ度々足を運ぶご縁をいただきました。

いつもご本山へ着きますと、先ず阿弥陀堂の山門をくぐり、鳩の群れに迎えられて、阿弥陀堂にお参りし、廊下に出て右手には毛綱と橇(そり)を見ながら、左手には今月のご命日の法要日程を見て御影堂(ごえいどう)へと入ります。

「またお参りに来ました。お久し振りでございます親鸞聖人様」と心の中でご挨拶をし、手を合わせ「ナンマンダブ、ナンマンダブ」とお念仏を唱え、お会いできた喜びを噛みしめて、しばらくの間心の中で、いろいろな思いを話しかけさせていただいておりますと、やがて何となく心が安まり、気が落ち着いてくるのでございます。

何時か、本山の研修に参加した時、ご講師の方が「御影堂の親鸞聖人に会いに来るのではなく、お膝元に帰ってきて、そして心新たに我が寺へ出かけていくのではないのか」と話されたことがございました。

そのことを思いだし、御真影(ごしんねい)の前で自分の思いを聞いていただくお参りを済ませて、聖人様に見送られて我が寺へと辿り着き、「さあ、心機一転がんばろう!」とその都度思うことです。

つい先日もそんな話をご門徒の方としておりましたら、その方も、「いや、奥さん、私も前から気が重くなったり寂しくなったら、ご本山にお参りに行くのよ」とおっしゃっておられました。

その方は数年前にご主人を亡くし、先日納骨を済まされたのですが、それを機にしてお膝元に帰るご縁をいただかれたということでした。

このようなご縁を大事にして、人生に明るさを失った時、また希望に輝いた時などには、いつでも親鸞聖人のお膝元へ帰り、そして心新たに出発しよう!と心の中で誓いを立てました。

そんなふうにして我が自坊の法灯を守り続けていけたらと思うことです。